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【マーケットエッジ株式会社】2017年の原油投資戦略を考える

提供:マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努


WTI石油イメージ

今年のNYMEX原油先物相場は、1バレル=50ドルの節目を挟んで乱高下が繰り返される展開が続いている。昨年2月の安値26.05ドルからはほぼ二倍の値位置に達しており、原油相場を取り巻く環境が改善していることは間違いない。しかし、従来の100ドル水準を試すような動きは一切みられず、辛うじて50ドルの節目ラインを防衛できるか否かが議論される状況に留まっている。

とは言っても、国際原油需給環境が急激に悪化している訳ではない。需給データを見ている限りでは、逆に原油高を支持するような動きの方が目立つ状況にある。例えば、5月16日には国際エネルギー機関(IEA)が最新の月報を発表しているが、そこでは国際原油需給は1~3月期が日量10万バレルの供給「過剰」とほぼ均衡化し、4~6月期には70万バレルの供給「不足」に転じ、年後半には更に供給「不足」幅が拡大するとの楽観的な見通しが示されている。

今年の世界石油需要は前年比で日量130万バレル増の9,790万バレルと大幅な積み増しが予想される一方、主要産油国が年初から170万バレル規模の協調減産に踏み切っていることで、昨年の40万バレルの供給「過剰」は解消に向かい、更には2013年以来となる4年ぶりの在庫の取り崩しも見通せる状況になりつつあるのだ。

5月25日には今年最初となる石油輸出国機構(OPEC)総会が控えているが、現段階では来年3月まで9カ月の減産延長を軸に合意形成が急がれている。年末までだけではなく、年明け後の需要の端境期にも減産を継続する方針を示すことで、協調減産による在庫環境の正常化を目指す強い意志が示された格好になっている。サウジアラビアやロシアなどは、過去5年平均まで在庫を削減することを目指す方針を鮮明にしており、「過剰在庫の解消→原油価格の適正化」が強く志向されている。

なぜ上昇しきれない原油価格?

では、こうした在庫環境の正常化が進んでいるにもかかわらず、なぜ原油価格は本格的に上昇できないのだろうか。かつての100ドル水準を直ちに回復することは困難としても、2月21日の55.03ドルをピークに、高値更新が見送られているのは、なぜだろうか。

一つ目には、在庫が減少しているとは言え、なお余剰感があることが指摘できる。5年平均と比較すると概ね3億バレル程度の余剰在庫が存在しており、このまま協調減産を続けても、近い将来の在庫環境正常化は難しいとの見方がある。実際にIEAも、産油国が望む在庫の5年平均回帰を実現するのであれば、追加施策が必要との指摘を行っている。

二つ目には、米国のシェールオイルなど、非在来型のタイトオイルの生産動向が読みづらいことがある。IEAの最新予想だと、非OPECの2017年産油量見通しは前年比で日量60万バレル増となっている。しかし、4月時点では49万バレル増が予想されており、僅か1カ月で11万バレルもの上方修正が行われている。米国のシェールオイル、カナダのサンドオイル、ブラジルの深海油田などは価格動向に敏感であり、原油価格の水準が切り上がると、生産見通しが大きく修正される傾向にある。特に、シェールオイルは短期プロジェクトが主体になっているだけに、原油価格が上昇すると石油リグ稼働数の急増と言った形でその影響が瞬時に顕在化する傾向にある。

従来だと、シェールオイルの増産が本格化する原油価格のラインは80ドル前後とされていた。しかし、現在ではゴールドマン・サックスの試算だと50~55ドルのレンジで、シェールオイル生産は加速するとされている。この「50~55ドル」が一種のマジックナンバーになってしまっているため、確かに足元の需給は改善しており、今後は在庫環境が正常化に向かうことが予想されるが、原油価格が上昇すれば再び需給が緩和するのではないかとの極めて高いレベルの警戒感が存在する訳だ。

シェールオイルは、日進月歩で生産効率を引き上げている最中の新しい技術であり、マーケットでも今後の生産トレンドについては予測困難との声が強い。漠然と50ドルを超えると増産が加速する一方で、50ドルを下回ると減速するとのコンセンサスが形成されている程度である。このため、「需給の引き締まり→原油高」と同時に、「原油高→需給緩和」がイメージされやすく、結果的に45~55ドルという50ドルの節目を挟んだレンジに居心地の良さを感じている向きが多い訳だ。

この状況を打破していくには、上向きには着実な在庫減少データを示すことでシェールオイルの増産許容余地を拡大していくこと、下向きにはシェールオイルの増産加速で協調減産の効果を相殺していくこと、などが求められることになる。今後は在庫減少と連動して緩やかなペースでコアレンジを切り上げていく方向でみているが、シェールオイルの生産動向分析の難しさが、原油価格の明確なトレンド形成を阻止する展開が続きそうだ。

原油価格に関しては、横這いからじり高傾向を前提とした投資戦略の構築が求められよう。当面は、45ドル水準での押し目買い、55ドル水準での戻り売りを基本としつつ、年後半の需要期には在庫減少傾向を確認しつつ、若干のコアレンジ切り上げを打診する方向でみておきたい。

WTI原油先物相場

(出所)Reutersよりマーケットエッジ作成

※当記事は、投資に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

提供:マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努