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【マネーツリー株式会社】「API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング」イベントに潜入


2017年6月29日(木)、14時30分から、東京八重洲のDIAGNONAL RUN TOKYOで、「API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング」をテーマとしたセミナーが開催された。主催したのは、マネーツリー株式会社。会場には、金融関係者を中心に100人を超すビジネスパーソンたちが駆けつけた。

司会を務めるのは、DIAGNONAL RUN TOKYOのマネージャーであり、イベント司会なども行う築地水瀬さん。

セミナーに先立って、まず、マネーツリー代表のポール・チャップマン氏が挨拶にたった。マネーツリーが、オーストラリアでMonetytreeとMT LINKのサービスを開始したことを告げてから、次のように語った。

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

写真左:築地水瀬さん/写真右:ポール・チャップマン氏

「2007年6月29日に、米国でiPhoneがはじめて発売され、私たちの生活を一変させました。AmazonのAWSは主要なサービスの屋台骨となっています。また、AppleのホームポッドやAmazonのアレクサという次世代のホームスピーカーの登場で、一般の家庭でもIOTを体験できるようになりました。このように、モバイルデバイス、クラウドテクノロジー、IOTは、良質なサービスを提供できたり、その反応をフィードバックできる世界を築き上げました。今回のような地方銀行を招いてのイベントは2回目となります。日本社会において地方銀行のデジタルバンキングの動きは大きく発展しています。そのなかで、メガバンクや地方銀行を問わず、さまざまな変化が問われる時期ではないでしょうか」

第一部【パネルディスカッション】これから始まる地方銀行のデジタルバンキング

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

大谷和利さん

登壇者は、株式会社横浜銀行ダイレクト営業部チャネル企画グループの五十嵐俊行さん、株式会社池田泉州銀行ICT企画室の吉岡純太さん、iBankマーケティング株式会社代表取締役および株式会社ふくおかフィナンシャルグループ営業戦略部iBank事業グループの永吉健一さん、マネーツリーMT LINK業務部長兼常務取締役のマーク・マクダッドさん、そして、モデレーターは、テクノロジーライターの大谷和利さん。

フィンテックに対する取り組み

まず、大谷さんは「フィンテックに対する取り組み」について、登壇者に意見を求めた。最初に答えたのは、池田泉州銀行の吉岡純太さん。

「フィンテックは、大きな視点から見ると、サービス業として出遅れていた金融分野に、サービス業をちゃんとやりなさいという流れがきたんだと思います。そのことを会社のなかでどうやって啓蒙していくか、閉鎖的な、保守的な頭の固い組織のなかでどうやって変えていくか、ある意味、社内改革に近いようなイメージでフィンテックに携わっています。それをひとつひとつ現実のものとして、おとしていくのがわれわれの今の仕事だと思っています」

次に、横浜銀行の五十嵐俊行さんが話を始める。

「横浜銀行の強みはデータを中心としたマーケティングやアプローチで、その流れからして、昨今のフィンテックの流れは基本的には、横浜銀行の歴代の担当者がデータを中心に考えていくことがDNAとして植え付けられていますので、フィンテックについてもデータを中心としたアプローチをしています。そのデータにAIを使ってやったらどうなるだろうという実証実験を昨年あたりから行っています」

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

写真左:吉岡純太さん/写真右:五十嵐俊行さん

3番目は、iBankマーケティング代表取締役の永吉健一さんがこう語る。

「5年ぐらい前からiBankを企画・検討しています。本当に顧客のニーズにあった商品を提供しているかを見直して、今、iBankという事業となっています。そして、デジタルの世界で戦うほうが新しい顧客の獲得に繋がるのではないかということで、スタートしたのが、私たちの新しいビジネスのきっかけです。で、私たちが目指すゴールというのは、営利企業なので収益の拡大や営業基盤の拡大で、そのために、今ある技術、ソリューションなどを組み合わせて、新しい世界に飛び込んでやろうよ、というのが現状です」

ここから大谷さんは、話題をAPIに絞っていき、マネーツリーのマーク・マクダッドに話をふっていく。たずねたのは、まず、APIの概要についてだった。

「APIでこれから何ができるか、ということで、金融機関でいろいろ検討をしているが、APIでの対費用効果など、これからAPIを使ったビジネスモデルができるのではないかと考えています。今後、2年から3年のうちに、APIで面白いビジネスがでてくると思っています」

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

写真左:永吉健一さん/写真右:マーク・マクダッドさん

APIのメリット・デメリット

では、APIはメリットばかりかといえば、金融機関にとってはデメリットの部分もあるのではないかと、大谷さんは問いかける。永吉健一さんがそれに答える。

「APIありきで入っているので、ビジネスモデルとしてどんなものがあるかは議論されていない。APIのいいところは、クローズドになっている銀行のいろいろな機能を新しく組み合わせて、新しいビジネスが生まれる種がたくさんある。それをどうやってビジネスにしていくのかを銀行側も、テクノロジー側も考えていかなければならない」

次に、五十嵐俊行さんが答える。

「お客さまのニーズに踏まえたサービスをやっていくことが銀行の本筋だと思うので、APIを使って、従来の銀行だと考えられないような、銀行の枠を超えたサービスができるのがメリットだと思っています。デメリットは、規制とか、インフラ整備のための行内でどう決済を取っていったらいいのかとか、皆さん、頭を悩まされているのではないかと思います」

対投資効果が見えてない部分があるが、顧客のことを考えたら、先行的にやっていく必要があるのではないかと、大谷さんがまとめる。続いて、吉岡純太さんが語る。

「銀行がサービス業として求められる役割を追求していくなかで、APIが必要になってくると思う。これはある意味、私的企業の側面もありますが、公的な役割としての必要性を追求していく、その先に、私企業としての存在価値や収益、顧客の拡大などがあると思っています」

大谷さんはいう。

「この金融テクノロジーの簡単に見えるところは、キャッシュレス化だと思うのですが、銀行にとってコストダウンにつながるし、社会的負担も減っていく。そこの部分がサービスとしてはわかりやすい」

どんなAPIを望むか

とまとめた後、どんなAPIを望むかと訪ねていく。吉岡純太さんが答える。

「政府のデータベースにアクセスできるAPIがほしい」

続いて、五十嵐俊行さんが、「電気代ではなく、使っている光熱量などの情報がとれると、電気代と実際に使っている光熱量を比較して、もっと家計の改善につながるようなものとか、そういう面白いことができるのではないかと思ったりします」と答える。

永吉健一さんは、「直接的にECにアクセスできなくても、アマゾンなど欲しいサービスがたくさんあるので、そことつながるとお金をどう振り分けて使っていこうかとか、そんなサービスもできるのではないかと思っています」と答える。

差別化はどうするか

「銀行が多角化していくことも十分に考えられる」と、大谷さんはまとめていく。ただ、APIみたいなものを使っていくと、どこの銀行も同じようなサービスになってしまうという可能性もあるが、そのあたり、どこに差別化のポイントがあるかについて尋ねていく。吉岡さんがそれに答える。

「銀行全体の会社としてのコストを下げて、お客さまの利便性を高めることを中心にやっていけばいいのかなと思っています。たとえば、銀行の窓口業務をアプリ化して、そこにAPIを利用するとか」

五十嵐さんは、「データ中心でやってきたことを差別化の要素と考えています。ONE to ONEのシステムを導入していて、お客様にいち早くサービスを提供することで、他行との差別化に繋がると思っています」と、答える。永吉健一さんは、「iBankを立ち上げて、銀行が取れない情報を取ったり、ローカルプラットフォームをつくって、いろいろな企業に参画してもらう。銀行が持っているデータを上手く活用できていないことが最大の課題ですが、お客様の潜在的な欲求やニーズにアクセスできる環境が整ってきつつありますので、この領域をいろいろなパートナーと結びついて、広げていきたい」と語る。

そして、最後はAIなどのテクノロジーが、どんな社会インフラを構築し、どんなサービスが期待できるかという、話題で第一部のセミナーは終わった。

第二部【講演】WWDC、SXSWに見るフィンテックの今後

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

大谷和利さん

SXSWとは、South by Southwestの略で、毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベントのことである。1987年に音楽祭として始まり、毎年規模を拡大している。 主催者はSXSW社である。

WWDCとは、はアップルが毎年開催している開発者向けイベントである。2002年まではSan Jose Convention Centerで開催されていたが、2003年からは、サンフランシスコのMoscone West Convention Centerで開催されている。

このふたつのイベントに大谷さんが参加し、その内容を説明した。そのなかで特徴的だったのは、これからは音声認識の時代で、音声によっていろいろなサービスを受けられる時代がもうやってきていることを、このふたつのイベントで大谷さんは目のあたりにしたと述べている。

第三部【パネルディスカッション】API、AIは金融業界の何を変えていくのか

登壇者は、HEROZ株式会社執行役員兼開発部長の井口圭一さん、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(略称 NTTデータ)第4金融事業本部の企画シニアスペシャリストの村上隆さん、フェンリル株式会社・ビジネス・エクスペリエンス・コンサルティングディビジョン・パートナー/エグゼクティブ・コンサルタントの島内広史さん、そして、マネーツリーのマーク・マクダッドさん。モデレーターは第一部と同じ大谷和利さん。

第三部は、金融機関へソフトウエアやシステムを提供する企業がパネリストとなっている。モデレーターの大谷さんは、各社の新しい金融サービスへの取り組みについて尋ねる。

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

写真左から:村上隆さん/井口圭一さん/島内広史さん

最初に、村上隆さんが答える。

「3年ぐらい前からバンキングアプリサービスを提供しています。マネーツリーさんと協力してよりよいアプリの開発をやっています。銀行の都合の上に立ったサービスではなく、本当に消費者にとって必要な金融サービスをつくっていくことが非常に重要なことだと思っています」

続いて、大谷さんは井口さんに尋ねる。

「最初は金融分野は意識していませんでした。AIがいろいろな分野でつかえるようになってきたことで、もっとも効果が大きいと思ったのが金融分野で、当社に金融分野に強い人間がいたことからも、そこに取り組んでいこうと思ったわけです」

次に、島内広史さんが答える。

「早い段階から、UI、UXがデジタルサービスを提供する時の大きな武器になると思っていたということでは、最近の流れに備えていたということになるかも知れません。私どもは業界を特定せずに、幅広いアプリの開発を行っていて、そこには異業種で培ったノウハウが生きています。ただ、ここ1年ぐらいは、金融関係の案件は増えてきています」

ここで大谷さんは、マネーツリーがオーストラリアでサービスを始めたことについて、マーク・マクダッドさんに、オーストラリアと日本の違いなどを尋ねて、話題を変える。

フィンテックのメリットとデメリット

「一部でも聞いたのですが、システムをつくっている立場として、フィンテックのメリット・デメリットについてはいかがでしょうか?」と、大谷さんはパネリストに問う。

島内さんが、「お客さんはセキュリティのところを凄く気にされていて、日本はネットは危険だというイメージを未だに皆さん引きずっておられるというところで、NTTデータさんのように、今まで培ってきたノウハウと会わせて、セキュリティのところを担保しながら、といいつつも、使い勝手のところでどこまでぎりぎりに攻められるかというのが、モノをつくっていくときに凄く大事なポイントになるのかなと思っています」

「人工知能が不正検知に使えるということで、その技術を使ってデメリットをメリットに変えていけるような見通しはありますか?」と井口圭一さんに問う。

井口圭一さんは「不正検知に対してAIは、というお話はよくいただいています。AIというのは、過去のいろいろな事例を見ていて、それをベースに次の判断を行う。そうすると、新しい不正の事例を見つけて、システムをシャットダウンすることもできるかな、と思っています。システムでカバーすることによって、なるべくデメリットを小さくして、利便性を挙げていくことは可能だと思っています」と語る。

API化のメリット、デメリット

「その部分をAPI化して提供できる可能性はどのぐらいでしょうか?」と大谷さんが問う。

「API化するのはメリット、デメリットあります。APIというのは誰でもアクセスできるので、試せるというのは、ここまでOKというのを調べられてしまうので、あまりオープンにしないほうがいいかもしれません」

「特許にするのが良いかどうかの判断もからめて、そういう問題も生じてくる」と大谷さん。

人工知能の応用

そして、人工知能の応用について、どう考えているかを、とくに、村上隆さんと島内広史さんに尋ねる。

村上さんが答える。

「うちの会社は何でもやっているので、人工知能もやっていますが、コンピュータは、エキスパートシステムから始まって、着実に進化しているので、使える部分はうまく使っていただきたいというのが私の個人的なイメージです。パーフェクトじゃなくても、あるところだけはAIを使うことによって、なかの業務の効率化だけでなく、お客さまが助かるとか、今の技術でもまだまだ使える領域があれば、そこから順序よくやっていくとか、まだまだ進化すると思っていますので、完成していないんでしょうけども、テクノロジーは昔と違いますから、その技術をどこの領域に使えば、お客さまのためになるか、銀行の合理化に繋がるか、そういう目線でAIもどんどん使っていけばいいと思っています」

「AIが今の技術でもヒットするところはどこだとお考えですか?」とさらに、大谷さんは村上隆さんに尋ねる。

「たとえば、入力補助とか、インターフェースです。実は、アンサーは電話の音声オートから始まっているですが、それは30年前のボイスチャットから始まったようなサービスで、また、30年経って戻ってきたかという感じですが、お客さま番号を認識して、自動的に音声が答えるという、35年前のアレクサのような、そういうところでも使える部分はあります。ボイスのインターフェースですよね」

そして、大谷さんは島内広史さんに、「ご自身の会社のサービスや商品にAIをどのように対応させるかを考えておられますか?」と問う。

「AIがわりと手軽に使えるようになってきましたので、いろいろ試しています。名古屋支社では、アマゾンの顔認識のエンジンを使って、出退勤を自動で打刻するようなことをやっています」と、島内広史さんは語る。

さらに、大谷さんは、AIのアンサンブル学習について、井口圭一さんに尋ねる。

アンサンブル学習は、最近流行りの人工知能技術のひとつですが、あまり賢くないAIをたくさん組み合わせて、それの合計や平均を取ることで、より賢いAIをつくっていこうというところでして、一部の分野では、ディープラーニングよりも良い成果がでることもあります。与信判断エンジンをつくったときには、アンサンブル手法を使ったりしています」

求められる金融アプリケーションとは

次に、大谷さんは、金融アプリケーションに話題を変えていく。そこで、島内広史さんにユーザーが求めている金融アプリケーションは何かを尋ねる。

島内広史さんは次のように語る。

「ユーザーが求めているモノはいろいろあると思いますが、金融機関が取り組んでいるのは、一度つくったアプリで、参照系にしか対応していないアプリで、振り込みといった実行系のアプリであったりとか、昨年、Applepayがでてきたときに、Applepay対応で案件が一時期、凄く増えました」

さらに、大谷さんは、金融アプリの開発で抑えなければいけないポイント、心がけていることについて、島内広史さんに尋ねる。

「セキュリティは当たり前ですが、最近、大事だと思うのは、お客さんをもっとわくわくさせるようなアプリが求められていると思います。さらに、お客さんが銀行に対しての期待値が下がっているように感じますので、たとえば、ロバアドバイザーのようなサービスとか、もっとお客さんをわくわくさせるようなサービスを導入するのが、凄く大事かなと思っています。その時に、使い勝手がよくて、誰にでもすぐわかるということにこだわっていくことが大事だなと思います」

第三部は、AIやAPIの議論を中心にセミナーが進み、定刻を10分あまり過ぎて、今回のイベントを幕を下ろした。

API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング

<辻 秀雄>