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【KPMGコンサルティング株式会社】Fintech関連事業の立ち上げ企業が集まった「アイルランドFintech企業フォーラム」に潜入


フィンテック東海林正賢氏

東海林正賢氏

七夕の2017年7月7日(金)、14時30分から、東京・飯田橋のあずさセンタービル4階の研修室で、「アイルランドFintech企業フォーラム」が開催された。共催は、アイルランド政府商務庁KPMGコンサルティング株式会社、後援はアイルランド大使館。会場には、Fintech関連事業の立ち上げを検討している企業の担当者など、約70人から80人が詰めかけた。

進行役は、KPMGコンサルティング・フィンテック推進支援室室長の東海林正賢氏。

アイルランドのFinechベンチャー・エコシステム

フォーラムのトップバッターは、アイルランド政府商務庁の首席商務官である比留間玲子氏。今の仕事に就くまでは、アイルランドは縁もゆかりもない国だったと前置きをしながら、次のように語る。

「アイルランドはイギリスの西にある小さな島国で、天然資源も何もない国ですが、イギリスから正式に独立して70年足らずで、EUでは英語を母国語とする唯一の国であることと、人口構成が大変若いということ、世界に散らばったアイルランド系移民=ディアスポラが経済に大きく貢献しています」

統一通貨のユーロが導入される前に、ヨーロッパの各国の通貨の細かい外貨決済業務を積極的に行っていた、アライド・アイリッシュバンクからスピンオフした会社が、クレジットカードのスキームと彼らが持っているマイクロエフエックスのノウハウを融合したような新しいサービスを立ち上げて、その分野で世界ナンバーワンといえるような企業に成長するサクセスストーリーがある。

フィンテック比留間玲子氏

比留間玲子氏

金融、IT、ライフサイエンス

アイルランドは、いち早く、悪しき平等主義を止め、金融とIT、ライフサイエンスを重要戦略産業と位置づけて、優先的に企業誘致や、そのための環境整備を行ってきた。具体的な活動は日本の産業経済相に相当するアイルランド雇用産業技術省の傘下にある、2つのステートエージェンシーといわれる組織で行っている。

その2つとは、外資系企業の誘致に特化したIDAアイルランド政府産業開発庁と、地場企業の国際化と企業促進を専門的に行うアイルランド政府商務庁である。

アイルランド政府商務庁の顧客企業は、いろいろな条件をクリアした5000社が名を連ねている。アイルランドの企業であればどこでもサポートするわけではなく、意欲的で、野心的で、グローバルに活躍できる期待が持てる企業のみをサポートするシステムになっている。

金融とITの集積地

外資系企業の誘致を始めた1980年当時は、現在の12.5%よりもさらに低い10.0%の法人税で、主に英語圏でアイリッシュ系の移民も多い北米企業の誘致に次々と成功し、ダブリンではいまではかなりのIT企業と金融企業が進出している。

なかでも、金融分野では、今からちょうど30年前の1987年に、サンドボックス方式に近い、かなり自由度の高い特区をダブリンの中心を流れる運河の両側にある倉庫街の再開発をかねて、設立した。

日系企業も、証券会社が銀行業務をしたり、航空会社がキャプティブ・インシュアランスの事業を行ったこともあった。

今では、この運河沿いの「シリコン・ドック」といわれる、大きな金融とITの集積地となっている。マルチナショナル企業が進出してくると、通常、地場企業を中心とする周辺の産業が発達するが、単に下請けや受託の企業ではない、先進的な技術創造のためのスタートアップ企業支援プログラムを、アイルランド政府商務庁で継続的に行っている。

200を超えるフィンテック関連企業

2016年の例では、約1300件の企業のアプリケーションが政府に対してあったが、補助金を使って最終的に105社のHPSU(ハイ・ポテンシャル・スタートアップ)企業が誕生した。

すべての会社がこのプロセスで創業されるわけではないが、約10%がフィンテック関連の企業で、今では200社を超えている。

アイルランドのフィンテック企業の特徴は、圧倒的多数がBtoBの企業で、トラステッド・サードパーティを迂回するようなサービスよりも、企業のコアビジネスを支援するような部署が多いことである。とくに、フィンテックのなかでも、他国に比べると、レグテックやインシュアテックのクラスターが充実している。

スタートアップ企業への投資

会社を興す際にもっとも重要なことはファンディングだが、ステートエージェンシーがシードとアーリーに特化したVCとして、ハイ・ポテンシャル・スタートアップ企業を中心に、直接または間接的に投資を行っており、現在、約1300社のポートフォリオを持っている。

投資は、アイルランド政府商務庁内の専門のグロース・キャピタル・チームという部署があるが、ここが国内外のVCやエンジェルと連携して、商務庁内のインベストメント・コミッティに図った上、マイノリティ・シェアホールダーである、または、投資総額の10%以上を政府が保有しないなど、いろいろなルールに則った条件をクリアした企業に投資を行っている。

アイルランドのユニークなところは、エンジェルが大変多く、海外在住の個人投資家も入れると、約3000人(2013年)がアイルランドのスタートアップ企業に投資をしていることである。

単純に数字だけを比べると、個人投資家などのインフォーマルな投資と、VCの割合は約5対1といわれている。また、エンジェル投資家を組織して、地方レベルでマッチングサービスを行っている組織もある。

さまざまな支援プログラム

スタートアップ企業への投資以外にもいろいろな支援プラグラムがあるが、とくに、2014年にスタートしたKTI Knowledge Transfer Irelandは、アイルランド国内のすべての国立大学や研究機関を組織の壁を超えて横断的に統合したオンラインのTechnology Transfer Officeとして、年間1000億円を超える政府からの研究開発費をアイルランド株式会社として有効に使う仕組みとして、多くの企業に利用されている。

現在、35のリサーチ機関がInnovation in Service & Business Process といった6つのテーマで、データベースや保有IPを公開している。

工場跡地にデジタルラボの設立

ベンチャー企業を支援する主要な4つのアクセラレーターだが、今までは政府を中心とするサポートプログラムが多かったが、大学や企業がこれに参入をしてきた。金融特区が運河まわりの倉庫街の再開発を兼ねていたといったが、それと同様に、ギネスビール工場の跡地の再開発のプロジェクトとして、2003年にアメリカMITのメディアラボといっしょに、デジタルメディアの企業の集積地として、デジタルハブが建設された。

ここはオフィス空間の他に、住居空間もつくられ、入居している企業のスタッフ同士の交流をさらに促進する狙いがあった。現在、約200社が入居している。

このデジタルハブのなかに入っているのが、ヨーロッパのナンバーワンのアクセラレーターとして評判の高いNDRCである。このNDRCは、National Digital Research Centerの略だが、その名前の由来が、もともと複数の大学が連携してつくった組織であったということで、ファンディングはもちろん、それ以外のサポートも充実していることで知られている。そのほか、アクセンチュアのFintech Innovation Labでは、とくに、アイルランドに進出している大企業とアイルランドの地場のベンチャー企業との連携を重視したプログラムが組まれている。

マスターカードのラボラトリーで行っているのが、マスターカード・スタート・パス・プログラムで、コマースを超えたアイデアやサービスを重視して、マスターカードの社員や社内のノウハウだけでなく、マスターカードの顧客へのアクセスを可能とするようなサポートを行っている。グローバルなサポートパートナー企業があるが、日本からは唯一、楽天カード株式会社が参加している。このほか、最近できたGoogleの起業家のスケールアップを担当しているチームと、アイルランド国内のウルスターパックがスポンサーとなっているDogpatch Labが金融特区のなかにある。

今後、アイランドはどのようにフィンテックに取り組んでいくか。アイルランドは、IFS、Ireland Financial Service 2020という計画を発表している、と比留間さんは話を締めくくった。

比留間玲子氏の講演が終わったあと、セミナーは、アイルランドに進出している、あるいは関係している企業のプレゼンテーションに移った。

インシュア・テックのデジタル・ディストリビューション

フィンテックレオ・コークラン氏

レオ・コークラン氏

比留間氏の後に登壇したのは、ClaimVantage, Inc.の創業者で最高経営責任者のレオ・コークラン氏。保険査定や支払部門の役割と業務上の問題点とは?昨今の顧客が保健会社に求めるサービスやミレニアム顧客への対応、グローバル市場で起こりつつあるインシュア・テックの技術変換と、この3年から5年で起こりえる未来像について話した。

お客さまの本人確認がID/PWのままで大丈夫ですか? 複数の生体情報(顔、声、指紋)を選んで認証

フィンテック中村英紀氏

中村英紀氏

3番目に登場したのは、Daonダイレクターの中村英紀氏。ECサイトにログインしようとして、「IDとPWが一致しません」と表示されたことは、利用者のほとんどが経験をしていると思われる。そこで、マルチモーダル(顔、声、指紋)、マルチファクター(PIN、鍵交換)による、銀行や証券、信託、保険、クレジット、交通、旅行、ショッピング他、各社に共通の認証サービスの仕組みや料金について語った。

クレジットカード自国通貨決済によるインバウンド顧客満足度向上・収益増加施策の提案

フィンテック渡部剛史氏

渡部剛史氏

4番目に登壇したのは、FEXCO Japanリレーションシップ・マネージャーの渡部剛史氏。クレジットカードにおける自国通貨決済の仕組みと、FEXCO社が持つ多様なビジネスソリューションについて、インバウンド需要をターゲットにしたBtoBビジネスへ、売上向上と顧客満足度向上策を提案した。

ここで15分間の休憩が入った。

ITを駆使した税務コストの削減策

フィンテック淵上暁氏

淵上暁氏

休憩後、最初に登壇したのは、Taxback International Japanのcountry managerで、オプティ代表取締役の淵上暁氏。海外出張経費(T&E)にかかるVATを還付する手法は、一部の企業で導入されていたが、労働集約的で、時間と手間がかかり、ROIにみわないため、断念する企業がたくさんあった。このセッションでは、経費精算システムとのIT連携による効率的なVAT還付手法の特徴と、最新の国際間接税管理の先進的な事例を紹介した。

電子トレーディング向けデータアナリティクソリューション

フィンテック大久保淳仁氏

大久保淳仁氏

その次に登壇したのは、Covil Japanの日本支社長である大久保淳仁氏。エクイティ、FX、先物、債券など、すべてのアセットクラスのオーダーフロー分析、トレーディングネットワークの遅延を含むパフォーマンス、コンプライアンス、規制、セキュリティの視点での可視化によるデータアナリティクソリューションについて、主要金融機関での事例や、今後のCorvilテクノロジーの応用分野について話をした。

Fintechがもたらすバックオフィス改革

フィンテック東海林正賢氏

東海林正賢氏

最後に登壇したのは、今回のセミナーの共催者でもあるKPMGコンサルティングのディレクターである東海林正賢氏。Fintechは消費者の利便性を高めるための金融サービスを多数生み出したが、既存の金融機関は新たなプロセスへの対応に抜本的な改革が必要な時期にきている。これから求められる変革についての事例などを紹介した。

各社の講演が終わったあとは、ブース会場で懇親会。講演で聴けなかったことなどを登壇者や出展企業のスタッフに質問するなど、意見交換を含めて、部屋のあちこちで活発なやりとりが行われ、無事に、「アイルランドFintech企業フォーラム」は、幕を閉じた。

アイルランドFintech企業フォーラム

アイルランドの概要

アイルランドFintech企業フォーラムアイルランドは、1922年、英連邦内自治領、1949年に英連邦を離脱し、アイルランド共和国となる。1973年、EC(現EU)加盟。人口は476万人。国民平均年齢34.2歳(日本は46.4歳)。面積は7万平方キロメートルで北海道とほぼ同じ。失業率は7.1%(2016年第4四半期)。対日貿易収支は、7421億円の黒字、医薬品とくにコンタクトレンズ、有機化学品、ソフトウェア(世界最大のソフトウェア輸出国)。低い法人税(12.5%)による外資導入政策と、GDP85%以上を輸出する輸出主導型経済(英語圏、ユーロ圏、アメリカとの繋がりに後押しされた開発段階からのグローバル・スタンダード準拠の製品戦略)。世界トップ100のIT企業、トップ17社の製薬企業など、多くの外資系企業がアイルランドに進出している。(出典:http://www2m.biglobe.ne.jp/ZenTech/world/map/Ireland/index.htm

<辻 秀雄>