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【金融庁】第5回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」潜入取材レポート


2018年5月30日(水)13時30分から、中央合同庁舎第7号館にある13階の金融庁共用第1特別会議室で、第5回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」が開催された。

座長の挨拶に続いて、金融庁総務企画局市場課市場業務監理官の御友氏から、資料1の説明として、「検討会についての意見募集結果の概要」が発表された。2018年5月8日(火)から18日(金)の期間で、電子メールにより意見を募った結果、寄せられた意見の総数は345件で、そのうち個人からの意見が342件と圧倒的に多く、法人からの意見はわずか3件だった。

レバレッジ倍率引き下げは困る!

主な意見として、次のように発表された。
1.自己資本、ストレステストの拡充
店頭FX業者の決済リスクへの対応策を強化するのであれば、自己資本の強化、カバー先の分散、厳しいストレステスト等で対応すべきである。

2.取引データの報告制度
配信レート等の不透明さが問題であるならば、報告の強化や情報開示の強化を行うべきである。

3.ロスカット制度ほか
投資家保護の観点からは、ロスカットルールの厳格化が目的に即している。
投資家の損失を抑えるため、業者が投資家の損失を補填するゼロカット制度の導入が望ましい。

4.レバレッジ倍率
レバレッジ倍率を引き下げれば、東京外国為替市場の出来高の多くを占めるカバー取引量も減少し、同市場の衰退につながる。
流動性の低い不安定な通貨に係わる取引については、規制を強化すべきではないか。
現状の25倍ですら諸外国と比較すると低い。さらなるレバレッジ倍率の引き下げは投資家の海外逃避を促進し、国内業者の衰退を招く。
10万円程度の少額の資金でも投資を楽しめるのが魅力であるのに、レバレッジが引き下げられるとこれができなくなり、納得できない。
働くことが難しく、やむを得ずFXで生計を立てている。レバレッジ倍率が引き下げられると追加の資金が必要となり、これまで通りの取引ができなくなるため大変困る。

5.その他
全ての店頭業者にNDD(No Dealing Desk=一般的には、カバー取引の成立ヲ条件として顧客との取引を行う取引手法)方式を強制すれば、未カバーポジションによる決済リスクが低減するのではないか。

検討会議事要旨のまとめ

続いて、御友氏は、第1回から第4回までの検討会で発言のあった意見をまとめたものを公表した。まず、店頭FX取引の規制に関する敬意や、リーマン・ショック後の国際的な規制の動向はスルーして、「3.店頭FX取引の外国為替市場及び金融システムに対する影響」から、説明を開始した。

店頭FX取引の年間取引規模は、2016年には5000兆円まで拡大し、東京外国為替市場のスポット取引額の内、店頭FX取引のカバー取引が2割から3割を占めている。

店頭FX業者の決済リスク管理を不十分なままにしておけば、急激な蕎麦変動等が生じた場合、外国為替市場や金融システムにも影響をおよぼし、システミックリスクにつながる可能性も考えられる。

店頭FX業者は、相場変動に起因する3つのリスクにさらされている。「相場変動による未収金(顧客の差入証拠金)の発生リスク」と「カバー取引先の破綻リスク」「未カバーポジションの係わるリスク」である。

これらの3つのリスクに関しては、2016年から自主規制として、ストレステストが実施されているが、カバー取引先の破綻リスクについては、G-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institution=グローバルなシステム上重要な金融機関)に関するリスク量が考慮されていないのではないか、未収金派生リスクおよびカバー取引先の破綻リスクについて、建玉残高が少なくなる1日の取引終了時点における建玉残高から算出することで十分か、ストレステストの実施頻度がすくないのではないか、といった指摘がある。

業者の中には自己資本の確保が十分でないところがある。

店頭FX業者の決済リスク管理の強化については、個々の対応策を適切に組み合わせて、ひとつのパッケージとして考える必要がある。
決済リスク管理の強化の対応策の実効性を確保するためには、基本的な枠口については金融当局の規制、監督による対応が必要ではないか。

自己資本の充実は、店頭FX業者が損失を抱えた場合の予防策として、3つのリスクのいずれにも対応可能であり、優先度の高い対応策である。
幻覚で適切なストレステストを実施し、その結果を必要となる自己資本に反映させていくことが必要である。ストレステストについては、厳格化、適正火を図る必要がある。

ストレステストの結果、自己資本着せ比率が一定の比率を下回る店頭FX業者については、現状、基本的に各社の自主的な対応に委ねているが、当局が自己資本の積み増したまは契約上の証拠金率の引き上げ(レバレッジの引き下げ)等を通じたリスク量の削減を求めていく必要があるのではないか。

日々の取引データ(約定、注文データおよび顧客に提示した価格等、カバー取引を含む)を自主規制機関および当局への報告を義務づけてはどうか。取引の監視体制の強化は、投資家保護の向上や適正な価格形成につながるものと考えられるのではないか。

自主規制機関の監視体制を整備、強化することは、店頭FX業者の適正なロスカット制度の執行を促すことになり、決済リスク管理態勢の強化につながるのではないか。

仮に、手法通貨別に、1985年以降の最大の相場変動率を前提として、未収金の発生リスクを証拠金のみによってカバーするとすれば、大半の通貨ペアのレバレッジは25倍を下回る水準になる。

証拠金率の引き上げ(レバレッジの引き下げ)による決済リスクへの対応については、未収金リスクの確実な備えとして必要であるという意見や、取引規模を抑えるために必要であるとする意見の他、投資家保護の観点から肯定的な意見があった。

証拠金率の引き上げは、店頭FX業者が抱える3つのリスクの内、業者の未収金発生(顧客の差入証拠金発生)リスクに備えるものだが、店頭FX業者の決済リスクの管理という観点から見た場合、業者の自己資本が充実し、未収金を吸収できる十分な財務基盤を備えることとなれば、必ずしも現状以上の証拠金規制は必要ないとの意見、また、ボラティリティのことなるさまざまな通貨に対して、一律の証拠金率を設定することは、理論的な裏づけが難しいとの意見もあった。

まずは、ストレステストを通じた自己資本の充実を通して、高度なリスク管理態勢の構築を確実に進めることとし、その効果を評価した上で、なお証拠金規制を含めた他の方策が必要であると判断された場合には、再度検討することとしてはどうか。

御友氏は、そう説明して、その他の対応策(未カバーポジ村の情報開示、ロスカット監視間隔の短縮、相場急変時の対応)について説明をし、「顧客の損失を限定する規制」については、ドイツおよびフランスでは顧客の預託した証拠金を上回る損失は店頭FX業者に転嫁する規制(Negative Balance Protection)が導入されており、わが国においても導入を検討すべきという意見があった。他方、この規制については、顧客は証拠金を上回る損失が発生してもそれを負う必要がないことから顧客が損失の可能性を省みずにリスクの高い投資を行うこと(モラルハザード)を誘引してしまうといった拡大等により、ロスカットを発動さえるインセンティブがましてしまうといった指摘もあり、導入についてはなお慎重な検討が必要ではないか、と説明し、「その他に検討すべき点はあるか」といって、資料2の説明を終えた。

各有識者の個別意見

事務局の資料説明の後、各有識者の意見がそれぞれ相次いだ。
委員A
「ストレステストの結果がないので、現状以上の証拠金規制は必要がないとはいえないのではないか。レバレッジは10倍以下で致し方ないかな、株式の信用取引の倍率と比べてもかなり高いのではないかと思う。資料1のレバレッジの意見で、投資を楽しめるとあるが、私の意見では、FXは投資ではなく、投機だと思う。また、やむを得ずFXで生計を立てるとあるが、私はFXは生計を立てるようなものではなく、FX業界もそのことを示すべきではないか。さらに、未カバーポジションの開示やロスカット監視間隔の短縮、相場急変時の対応はぜひやってもらいたい。ストレステストの実施については当局がしっかり監視をしてほしい」

委員B
「ストレステストの内容については、厳格性や的確性において、東京金融取引所が行っているものと少なくとも同レベルで考えた内容のストレステストであることが望ましい。ストレステストの実施状況や自己資本の積み増し、証拠金率の引き上げ等についての実行状況を継続的に監視する仕組みが必要である。データの報告制度については、自主機関の人員の確保など十分な体制が必要であると考えている」

委員C
「この検討会のヒアリングを通じて、FX業者のリスク管理態勢の不十分な業者が市場に参加しているのではないかという懸念を深められた型が多かったのではないかと思っている。また、業者の問題点を指摘されたが、この点をスピード感をもってどう解決していくかが課題である。さらに、レバレッジの問題以前に、ストレステストを厳格に、適正に頻度を多くして実行することが必要であり、ストレステストの結果、自己資本が足りない業者については金融当局が自己資本の積み増しを求めるとか、それができないのであれば、証拠金の引き上げを監督官庁として指示することが迅速に求められる。また、G-SIFIsであればリスクがゼロであるという意見もあるが、必ずしもそうではない。リスク削減のための清算機関の創設が重要ではないかと思う。さらに、取引データの報告制度の充実はその通り実施していただきたい。個人と事業者が相対取引をすることについて、利益相反や情報格差があるという問題意識を持っているので、価格形成の公平さはこの市場にとっては重要な価値であり、行政はその価値や利益を守る立場にあり、そのためにも、監視の目がはいることは必要である。

レバレッジ規制は一般的に投資家保護に資すると考えてはいるが、まずは、ほかに代替しうる方法を検討する必要があると思っている。ストレステストを通じて事業者に自己資本の充実を行っていただき、高度なリスク管理態勢の構築に取り組んでいただきたい。その効果を計った上で、議論を再開すべきかどうか考えるという案に賛成をする。未カバーポジションの情報開示については、店頭FXの愛好者が事業者に開示を求めていってほしい。決済リスクは投資家にとってはないほうがいいはずであり、決済リスクの軽減に真面目に取り組んでいる業者を選択できるような情報開示をも止めることが、まじめに取り組む業者を育てることに繋がり、結果として良質な店頭FX業者を育てることになる。FXや仮想通貨の取引ついては肯定的な立場には立てないが、他人に迷惑をかけない限りは尊重されるべきかなと思っている、しかし、為替リスクなどが一般の個人に波及しないように当局にはしっかり監視をしていただきたい」

委員D
「レバレッジ規制を行うよりも、業者の自己資本を充実させるほうが大事であるという観点に立って、細かい案を盛り込まれたものと思いますが、事務局が提示された案に賛成をする。とくに、ストレステストを通じて自己資本が不足していると見られる業者に対しては、当局が自己資本の積み増しや契約上の証拠金引き上げを求めるとあるが、ぜひこれを行っていただきたい。取引データの報告制度の充実だが、これも決済リスクへの対応策というだけではなくて、利益相反関係に基づく不公正取引の防止も視野に入れて、健全な取引が行われるよう、自主規制のレベルを引き上げてもらいたい」

委員E
「自主規制機関と当局の役割分担は非常に重要なところがあるが、自主規制や行政規制の高度化を可能にするようなフィードバックという観点も必要である。ストレステストと自己資本の拡充ということについては、指摘されているような対策はぜひ必要である。また、自己資本規制比率については、店頭FX業者のリスクを適切に把握できているかという問題提起がされていたが、ストレステストの在り方やその結果の検証のなかで必要とあらば、さらに検討することも必要かと思う。取引データの報告制度はぜひ必要だ。リスク管理能力を高めていくため、その前提となるリスク把握能力を高めることを業界として進めていくことは極めて、重要である。また、取引データの報告制度を実施するためにはコストがかかるが、これはより洗練された取引を提供するということで、業者にとってはそのコストは投資と考えてもらいたい。また、IT技術によって、低コストを促進できるとも考えられる。低コストで充実した報告制度の構築を望む。証拠金についての規制は必要だが、まずは、リスク管理能力の向上、リスク管理の高度がまず、重要である。また、未カバーポジションの情報開示は不可欠である。また、Negative Balance Protectionについては、将来的には検討すべき課題であると思う」

委員F
「ストレステストについては、厳格化など問題はないと思う。提案をみると、店頭FX業者に高度に能力を発揮することを求めているように見えるが、これは長い目で見ると店頭FX業者の信用力の向上にもつながるし、業界の信頼度の上昇にもつながるので、中長期に業界を成長させる、あるいは取引を健全化することにもつながる。また、清算機関への参入を促すのも良いアイデアと思う」

委員G
「データ報告制度の充実については、コスト面が高くかかることは想像できるので、そこはどうやって低コストで、しかも、対費用効果が上がるような対策を、自主機関を通して考えていただきたい」

ひと通りの意見が委員から出された後、座長は、金融先物取引業協会の業務課長である山崎氏を名指しして、今回の検討資料としてまとめられた内容についての、対応策や覚悟のほどを尋ねた。山崎氏が応える。
「討議資料としてまとめられた中にいくつかの提案があるが、それを実行するのに多大な覚悟を持って臨む気持ちでいる。そのなかで、2点ほど述べておきたい。今回の対応策をみると、システムの変更や新設を伴うもので、その開発には大手の業者でもかなりの時間を必要とする氏、中小の業者に確実にこれらの対応策を実施してもらうためには、金融当局にもある程度の時間的な配慮をお願いしたい。取引データの報告制度は店頭FX業者にとっては初めての制度になるので、業者に納得していただくためには、対費用効果を考えて、調査、検討、設計を行って、速やかに業者間で交渉していきたいと考えている」
と意見を述べた。

続いて、セントラル短資FXの代表取締役社長である松田氏が、意見を述べる。
「店頭FX業者として協会と共にかねてから、課題に取り組んできています。ストレステストの高度化のためのワーキンググループをつくって議論を深めることで、リスク管理をいちだんと向上させて、市場の発展と安定に貢献して参りたいと考えている」

そして、第5回の検討会を締めくくるかたちで、座長の岩尾氏が意見を述べた。
「1980年代から1990年代にかけて、金融規制の考え方が大きくパラダイム転換をした。その背景には金融環境の高度化、複雑化があり、直接金融機関の行動を制約するかたちの規制が弊害や非効率性を招くことが多いというので、原則的には金融機関の行動を、自由化を進めると。しかし、行動に対して責任を取れる体制は確保してもらうということで、自己資本の充実を求めることになった。これを裏返していうと、自己資本が充実していて、ちゃんと責任を取れるような体制が取れれば、自由に活動してもらってけっこうだとなった。自己資本が不足していて、行動に対して責任が取れない体制にある金融機関や業者に対しては、活動を制限させてもらうという考え方に変わった。直接的な規制から、自己資本を中核とするような考え方に変わったように思う。

今回はそのラインにそって対応を検討してきたわけだが、自己資本の充実は何に対して充実化といえば、リスク量に対して充実ということだから、リスク量の把握が適切かどうかが問題で、リスク量の把握が甘ければ、表面上は自己資本が充実していても実態はそうではないと考えられるわけだから、厳格で正確なリスク量の把握を行った上で、そのリスク量に見合ったかたちで自己資本が充実していけば、原則的に、行動への直接的な制約は手控える、という考え方に基づいて対応する。今回の対応として、基本的な考え方としては、適切だと思っている。

一律的な規制は、それ以外に手がないというときの最悪な手段だと個人的には思っている。真面目にやっている業者もそれによって制限を加えられ、ディスカレッジすることになるので、行動に対して自己責任を全うできるかどうかがあることで、差をつけた対応がなされてもいいのではないかと思う。今回、自己資本が不十分だと思われた業者に対しては、行動をかなり制限させてもらうことになっていて、自己資本が十分足りていれば、行動の自由を保障する、という方向性が妥当ではないかと考えている」
と、検討会を締めくくった。

今回で第5回を数える検討会だが、次回の開催も決定しており、提案された内容については、金融庁のほうで区分けをして、具体的な対策として打ち出す方針だという。

記者の眼

「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」も今回で第5回を数えた。私自身が全ての検討会へ出席できたわけではないが、当初、懸念をしていたレバレッジ規制については、ひとまず、回避されることになったのは間違いないが、有識者の間には依然として、FXは投資ではなく、投機であり、レバレッジも他の金融商品に比べると高いと思っている方も少なくない。この問題はまだまだ尾を引きそうである。

それよりも、今回、FX業者にとっては、自己資本の充実やストレステストのさらなる実施、取引データの報告制度の構築が急務となり、さらに、ますます公正な取引が求められることになった。しかし、考えてみればそれはすごく当然なことで、FXという通貨ペアの価格が上昇するか、下降するかわからないものに資金を投入して取引をするわけだから、そのリスクたるや相当なものである。だからこそ、価格形成の公正さ、透明性が厳しく求められ、厳格なルールの元での取引環境の提供が店頭FX業者に求められるのは、当たり前のことである。

しかし、店頭FX業者にあまりにも厳しい規制を課すのはどうか、とも思う。したがって、自己資本がリスク量を吸収しうる水準をクリアし、行動そのもの責任が取れるような体制であれば、活動の自由は制約はしない、という考え方は非常に適切だと思う。
少額で、売りからでも、買いからでも取引できるFXの魅力を失墜させないために、金融当局、自主規制機関、FX業者がいったいとなって、FX市場やFX業界の健全化に取り組んでもらうことが、投資家に対して安心感、信頼感を与えるのではないだろうか。

<辻 秀雄>

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