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【その男の名は高木清明】Vol.13 伝統的な投資対象と相関関係がほとんどなく「分散投資」の一つとされる商品先物取引の妙味とは?


その男の名は高木清明

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商品ファンドと当業者、そして個人投資家

商品ファンドの魅力は、値動きに関して、株や債券といった伝統的な投資対象と相関関係がほとんどない点だとされている。だから株や不動産などへの投資を手掛ける投資家にとっては「分散投資」の一つとなる可能性はある。

だが取引所や監督官庁の思惑は別にして、清明自身は、商品ファンドの最大の魅力は他の金融商品を圧倒する利回りにあると考えている。実際、欧米では「年間利回り目標20%」「昨年実績30%」といった宣伝文句を目にする。

そしてその秘密は、何といっても商品先物取引に特有のレバレッジの大きさにある。

レバレッジは、日本語では「梃子(てこ)作用」と翻訳されている。時価100万円の株式を購入するには、そのまま100万円の資金が必要だ。しかし先物市場で、仮に100万円相当の粗糖を買う場合には、その5~10%にあたる証拠金を預ければよい。つまり小さな資金で大きな資金を動かせるという意味だ。言い換えれば、投資資金が小さいにも関わらず、大きな損益が生まれる可能性がある。

こうした独特の取引システムは、商品先物取引が当初、生産者や加工業者、輸出入業者など「当業者」と呼ばれる人たちにとってのリスクヘッジ市場として生まれたことに起因している。だから、業界では「1枚」と呼ばれる売買単位も、業者が通常の取引で使う単位に合わせて大きく設定されているのである。

例えば東京粗糖は、先物市場では1㎏単位の価格を表示しているが、実際に受け渡しされる1枚の単位は1万㎏である。

ABスターン社が今日1kgあたり42円の価格で買った粗糖も、仮に現物を1枚分受け渡すことになれば1万倍の42万円が必要となる。それを2,400枚買ったのだから、ABスターン社は、実は今日1日で2,400万Kg、金額にして10億800万円分の粗糖を買った計算になる。

そして、商品先物相場が面白いのは、これだけの金額の粗糖を1枚あたり2万5,000円(2,400枚なら6,000万円)の「証拠金」で取引でき、売買損益は、この現物価格に基づいて計算されるところにある。これもまた、当業者である会員が現物取引の価格変動リスクをヘッジするために先物市場を使うところから決められたルールの一つといっていい。

そしてこのレバレッジの大きさが、先物取引で利益を求める投資家にとってはたまらない魅力となり、同時に怖れにもなる。

1Kg42円の粗糖が仮に43円に上がると、1枚の利益は1円×1万Kg=1万円になる。1万円という金額は、1万Kgの現物価格の42万円に比べればわずか2%ほどに過ぎない。だが、2万5,000円の証拠金に対しては約40%の利益に相当する。逆に1円下がれば投資金額の40%がマイナスになる。

商品相場はよく「値動きが大きくて怖い」と評される。しかし正しくは、値動きではなく、「レバレッジが大きくて怖い」と言うべきなのだ。

実際のところ、粗糖先物にしても、毎日1円も2円も動くわけではない。粗糖市場で売買される時の値動きの最低単位(値刻み、または呼び値ともいう)は1Kgあたり10銭と決められている。「今日は42円10銭から30銭まで20銭上がった」という具合に使われる。

つまり、粗糖取引については10銭単位でしか値動きしない時もあるということだ。事実、清明が粗糖相場に関わり始めてからの1か月間の粗糖相場は、42円を中心として上下30~40銭程度の小動きに終始してきた。1日で1円以上動いた日は2日しかなかった。

ただそれがすべてでないことは、87年の春から夏にかけての数か月で20円以上も暴騰し、50円台を示現した相場が証明している。同じこと、あるいは逆のことが起きないという保証はない。問題は、その時にどう動くかである。

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光栄物産の資金源

<益永 研>

この物語は実話に基づいているが、登場人物や企業名はすべて架空のものである。